2007年10月21日

父が枕元に来た夜

 小さいころ(多分小学生くらい)、眠れなくてグズグズしていたとき、父さんが枕元に来たのを覚えている。そのとき、親というものは子供の寝顔を見に来るものなのだ、と知った。

 父さんに眠れないと言うと、眠れないなら起きていればいい、と言われた。起きていていいのかと思った。子供のころは「早く寝なさい」と母に言われ続けていたから、起きてもいいと言われるのは意外だった。

 父さんは、体は休ませたほうがいいから、朝まで目をつぶっていなさいと言った。それでぼくは、目をつぶっていろんなことを考えることにした。そうしていると、眠れることもあるし、朝まで考えていることもあった。考えていることが悲しいことだと、泣くこともあった。面白くて笑うこともあった。ぼくはそういう、ちょっとおかしな子供だった。

 眠れない夜は、たいてい父が枕元に来た夜のことを思い出す。一時期は父のことが嫌いで顔も見たくないと思っていたけれど、今はそれなりに仲良くやれていると思う。ぼくは父に似ていると言われることがある。父も眠れない子供だっただろうか。

 疲れているけれど眠れないので、父が枕元に来た夜のことを書いてみた。今考えてみれば、父の言葉は禅問答みたいだ。でも、父が枕元に来た夜を境に、寝るときに考えごとをするようになったのは確かだ。

 あれからもう二十年以上も経った。まだうまく眠れないけれど、眠り際に笑うことはなくなった。泣くことはたまにある。子供のころと比べて、空想に起伏がなくなってきたのかもしれない。
posted by Nary at 02:35| Comment(0) | 日記
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